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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 経営に必須の『SDGs』入門 理解し活用する意義

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 経営に必須の『SDGs』入門 理解し活用する意義

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

『SDGs入門』

(〈株〉日本総合研究所 村上 茅・渡辺 珠子著 日本経済新聞社)

 

■         企業経営にとって「SDGs」を理解し活用する意義(はじめに)

【「SDGs」とは何か】

 「SDGs(Sustainable Development Goalsの頭文字)」と言う文字を最近新聞等でよく見かけるようになりました。なんとなくイメージは沸きますが、「SDGs」の内容の正確な把握はできているでしょうか。紹介本が示す定義の要点をご紹介しましょう。

 「SDGs」は2015年9月25日の第70回の国連総会で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」です。分かり易く表現すれば「2030に向けた、全世界共通の、『持続可能な成長戦略』」となります。

 「SDGs」は17の目標(ゴール)、169のターゲット、232の指標(ターゲットの進捗状況の計り方)から成り立っています。尚、ターゲットには“2・5”あるいは“2・b”といった符号がついています。前者は「ゴールの中身に関するターゲット」、後者は「ゴールの実現方法に関するターゲット」と使い分けられています。合わせて169になるのです。目標1~6は「住みやすい社会を作ろう」、目標7~12は「持続可能な経済圏を作ろう」、目標13~15は「我々を取り巻く環境を守ろう」です。更に、この目標1~15の目標を達成するために必要なのが、目標16の「平和を維持すること」と目標17の「お互いのパートナーシップ」です。

【「SDGs」と企業経営の繋がりを理解する】

 著者は『経営者が感じる「SDGs」の3つの魅力』を挙げています。①「新規事業開発や既存事業の拡大につながりそうだ」②「新たな人材獲得の武器になりそうだ」③「コミュニュケーションツールとして有効だ」です。

 この3つの魅力を実現するツールを著者が紹介しています。分かり易いツールの例として、『「SDGコンパス」+「PDCAサイクルによるSDGsの取り組み」』や『ロジックツリーを応用した「ロジックモデル」+「KPIマネジメント」』などが示されています。是非ご関心のある方は本書を手にして、読取・活用して頂ければと思います。

 ちなみに、2018年12月の経済産業省関東経済産業局「中小企業のSDGs認知度・実態等調査結果」によれば、「SDGsを全く知らない」+「内容を知らない」が92.2%との結果が出ています。中小企業の経営者に「SDGs」を良く分って頂くことで、課題である、生産性の向上の契機にできると思います。

 それでは、「3つの魅力」を実現した企業の実例を次項に記します。



■         企業が「SDGs」を有益に活用している事例

 「SDGs」の経営への活用・成功事例は最近急速に増えています。字数の関係もあり、紹介本に記述されている多くの活用事例、マスコミで取り上げられている多くの活用事例の中から、「3つの魅力」につき1事例のみ記させていただきます。それ以外の活用事例については、紹介本に加え、WEB等を是非参考にして下さい。

【「新規事業開発」と「既存事業拡大」の事例】

 セイコーエプソンでは、使用済みの紙を投入するとその場で100%の再生紙を製造する「ペーパーラボ(PaperLab)」と言う機械を開発しました。このペーパーラボは、 1時間でA4サイズ使用済用紙915枚を処理し、720枚の再生紙を作り出す事が出来ます。

 この処理は、水をほとんど使わず(通常はA4サイズの紙を1枚作るのにコップ1杯程度の水が必要)、外部への委託処理もありません。

 この結果、「SDGs」のターゲット8.4「消費と生産における資源効率を改善し経済成長と環境悪化の分断を図る」、12.2「天然資源の持続可能・効率的利用」、12.4「環境上適切な廃棄物の管理」、12.5「廃棄物の大幅削減」に貢献するだけでなく、ターゲット6.4「水の利用効率の大幅な改善」、9.4「資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大」、15.2「森林減少の阻止」等、様々なターゲットに貢献している画期的な製品と言えるのではないでしょうか。

【「新たな人材獲得」の武器として活用】

 「・・誰もがやりがいを持って働き続けること・・」をミッションとして「女性の再就職」を支援している株式会社ワリス(Waris)の事例です。

 ベンチャー企業は成長するに伴い、バックオフィス(管理部門)業務を派遣に任せ、本業に注力できる体制にする必要があり、バックオフィス職はベンチャー企業からの引き合いが多く、再就職する女性にはチャンスです。そこに注目したワリスは、ベンチャー企業のニーズを把握し、それに対応できるstaff(人材)、skill(能力)、style(リーダーシップ)などの独自のプログラムを有し、バックオフィス職に相応しい人材を確保し、或いは必要な教育等を実施し派遣プログラムを充実させています。それと同時に、インターンシップの導入、働く時間・場所を柔軟に選択できる体制の構築もしています。この結果顧客数は1700社、派遣登録者は1万人と大きく成長しています。

 ワリスは、この様にバックオフィス職の人材を豊富に有していることから、大小を問わず、企業がバックオフィス業務のみを切り出して、派遣に切替え固定費の人件費を変動費化するニーズにも応えています。

 ワリスの再就職支援や専門人材の活用支援は、ターゲット8.5「生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事」に加え、柔軟な働き方を支援することで8.5「安心な労働環境を促進する」を達成し、社会に貢献しているのです。

【「コミュニュケーションツール」として活用】

 大和証券グループは、社内に「SDGs推進委員会」を立上げ、中期経営計画にも取組み強化を盛り込んでいます。その結果、新しいSDGs商品の売り出しや、新しいSDGs事業への参入に成果を出しています。

 この様な成果は、SDGsへの取組み中で、社員にSDGsに係る取組み事例を募集したところ、直ちに120人もの社員から4200個を超える応募がベースとなっています。応募が多数にのぼった事は、SDGsの目標(ゴール)、ターゲット、指標が「コミュニュケーションツール」になっていることの証左ではないでしょうか。(「日経朝刊2019.9.30大和証券グループ広告」より)



■         必ず企業経営にプラスになる「SDGs」を早速はじめよう(むすび)

  SDGsの『経営にとっての「3つの魅力」』を実現するには、現在実施しているISO1400・9000等の中に「SDGs」を取込むことで直ちに始めることが可能です。勿論、前述した紹介本のツールを使って新たにスタートするのも良いでしょう。

 いずれにしても、SDGsを経営に取込むことで必ず経営の革新をもたらすと同時に、新たな企業価値の力強い発信力になるのではないでしょうか。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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  1. 2019/12/24(火) 12:05:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 古き佳きエジンバラから新しい日本が見える

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 古き佳きエジンバラから新しい日本が見える

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

   今日のおすすめ

     『古き佳きエジンバラから新しい日本が見える』

      (ハーディ智砂子著 講談社+α新書)

■ エジンバラでファンドマネジャーとして活躍する日本女性の視点(はじめに)

 著者はスコットランドの首都エジンバラで活躍する日本人女性です。エジンバラの著者に日本・日本人がどの様に見えたのか、その点に興味を持ち、また皆さんに知って頂きたい思いで紹介本を手に取りました。

 

エジンバラは歴史的に見てどのような地政学的意味を持つのか】

 エジンバラは、United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(イギリスの正式呼称=UK)を構成するカントリー、スコットランドの首都です。『エジンバラは経済において最大の産業は金融産業(保険、資産運用が強い)。ロンドン・フランクフルトに次いでヨーロッパ第3位、世界でも第6位の金融センター(二之湯武史「エジンバラ-21世紀型の都市-」より)』の論文と、著者が『エジンバラは地方都市かと思っていたが、先輩の話では、ヨーロッパの金融センターの一つで、多くの老舗金融機関の発祥の地であるという』と述べている事と符合するのです。

 スコットランドとイングランドは長い間お互い独立国として抗争を続けてきましたが、1707年スコットランドは経済力があり地政学的にイングランドに近いスコットランドのローランド(北部の山岳地帯はハイランド)勢力の賛同もあり、大ブリテン王国として、イングランドに併合され一つの国家としてスタートしました。(アイルランドは、1649年ピューリタン革命を起こしたクロムウェルにより制圧され植民地となり第二次世界大戦後アイルランド共和国として独立しますが、その際プロテスタントの多い北アイルランドはUKに残留)。

 そんなエジンバラは「国富論」のアダム・スミスとも深い関係があり、少し広いスコットランドから見ると、産業革命(更には資本主義)に強い影響力を持ったカルヴァン派の一派が主流となり、産出する石炭と相俟って、イギリスの産業革命を支えたのです。現在は北海油田を抱えるカントリーです。

 お話はエジンバラから更に跳んで、UKの複雑な歴史の一部を見ることになりましたが『イギリスの「EU離脱」』の先行きを読み解くうえの「メタ」な情報に繋がると思い、筆を滑らせました。



【日本から遥か離れたエジンバラから見える新しい日本】

 著者がファンドマネジャーとして著書を表すまでになるには、多大な努力と経験と時間とを積み重ねています。それに加えて女性ならではの感性を持っていると思います。そんな著者が、日本から遥か離れたエジンバラで熱心に仕事に打ち込んでいるからこそ見えたもの、その見えたものが結果という検証を経て、確信できる真理に到達しているのではないでしょうか。

 その様な真理は、私達経営に関わるものにとって大きなヒントとなるのではないでしょうか。著者が難しい理論ではなく、日常のビジネスの中で、自然体で捉え、見えた真理を次の項でご紹介します。

■ 著者が語る「エジンバラで確信した日本の成長性」

 

【エジンバラで確信した『「日本人の強み」「日本人ファンドマネジャーの強み」』】

 著者は、フランスの保険会社AXAグループの投資運用会社AXA Investment Managersで、日本株のファンドマネジャーとして活躍するプロです。著者は自分の強みを「普通の日本人であること」と強調します。それは、「日本人であるからこそ発言できる事」を「自信と思い入れ」を持って語れることだとします。

 著者は、ロンドンで開かれる全体会議に出席する以外は、エジンバラのサテライト・オフィスに拠点を置き、日本の経営者やIR担当者とコミュニュケーションを取り、著者の独自の戦略を以って抜群の成果を上げています。独自の戦略とは、勿論のこと的確な分析を前提としながら、『普通の生活者としての常識を失わない』『プロであっても素人の目を持ち続ける』『「トップダウン(日本経済全体)」ではなく、「ボトムアップ(個別の企業の成長性)」で判断する』に重点を置いているのです。

 

【エジンバラで確信した「成長する企業の特徴」】

〔日本の優良企業の人材選抜法〕

 著者は、ある経営者の次の発言にこれからの成長する日本企業の特徴を見いだしています。「企業として価値を生み出していくために、次々と増えるポストに、最も相応しい能力や性格は何か、そのような人材を判別・採用する方法は何かにエネルギーを注いでいる」。著者は、この経営者の発言に、「この様な変化は日本でも起こり始めている」と加え、経営学で最近盛んに言われている『「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への人事政策の転換』を先取りしている様に思えます。

 上記以外にも、何気ない「私の履歴書」的な語り口の中に、長期的に成長する優良企業のあるべき特徴について書かれていますが、字数の関係でご紹介できません。紹介本を是非手に取りお読みください。

 

【エジンバラで確信した「日本の未来は明るい」】

 著者は、『日本の「少子高齢化」を外国のファンドマネジャーは否定的に見るが、この様な課題を抱えているが故に、課題先進国として積み重ねたノウハウを更に発展させ、新たな道を開いていく力が日本・日本人にはある』として「日本の未来は明るい」と言い切ります。

 又、コストカットをして格段に高い報酬を得る欧米型経営のプロを対極に置いて、日本の優れた経営者は、会社を愛し従業員を愛する経営者が多くいると指摘し、そのような経営者が、従業員が高いモチベーションを持って企業価値を創造していく環境を作り出す事が出来るとして「日本の未来は明るい」といいます。

■ 今こそ『何を「守破離」すべきか』を考える時(むすび)

 「外国人の見る日本」については、多くの著書があり、この場でもいくつか紹介して参りました。そこでは、私たち日本人の価値観の変革を促す、良い知見を多く得ることが出来たと思います。

 「外国在住の日本人から見た日本」について書かれた本は、紹介本が初めてでした。日本人である著者の外国から見た日本観により、日本・日本人の良さを再確認すると同時に、日本人に良い方向に変わってほしい日本・日本人の弱み・課題も再確認することが出来たと思います。

 紹介本を読んで思うことは、多分著者も同じ思いと思うのですが、今直ちに企業経営の観点から着手すべきは、自社の強み・良さを明確にし、それを更に価値あるものに高め(守・命題)、更に飛躍して(破・対立命題)、新たな価値を創造する(離・統合命題)過程で、自社の課題・弱みを新たな価値を創造する基軸に貢献するよう改革し、持続的・長期的利益(SSP:Sustainable Superior Profit)を出せる企業へと経営革新を図っていくことではないでしょうか。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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  1. 2019/10/22(火) 12:05:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 日本経済低成長からの脱却 松元 崇 著  NTT出版

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 日本経済低成長からの脱却 松元 崇 著  NTT出版

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

『日本経済低成長からの脱却』(松元 崇 著  NTT出版)

 

 

■ 日本経済低成長から脱却することの意義(はじめに)

 著者は、内閣府の元次官で、アベノミクスの立ち上げに参画した経験を有します。その様な著者が政権の当事者ではなく、第三者として客観的に日本経済を俯瞰し、日本経済の課題の核心を突き、対応策を提言しています。著者が指摘する現在の日本経済の問題点を以下で見てみましょう。

 

【世界の中で縮み続けている日本】

 世界の経済構造が1990年代以降大きく変わりました。それは、IT技術の進歩と通信コストの激減と自由貿易体制(米中もEUも保護主義的な政策をとりながらも、自由貿易が大切との看板は下ろさない)により、モノの生産という点で、世界が一つの国になったことです。世界は、グローバルな競争の中で、得意分野に経営資源を集中し、不得意分野は切り捨てる、「選択と集中」の時代になったのです。しかし、日本国内では雇用慣行などにより「選択と集中」が難しく(特に撤退が難しい)、日本企業は、撤退の伴うリスクは海外で投資をする形になってしまい、国内経済成長の低下要因になっているのです。技術革新力、研究開発費はOECDの中で、ドイツ・アメリカと並んでトップクラスにも拘らず、企業が国内の投資に向けない結果、成長率低下の一因となっているのです。

 

【成長会計から分析する日本の経済成長率の低迷】

 日本が低成長になっている事を、成長会計という手法で分析しています。経済成長には①技術革新など②資本③労働力が必要とされます。労働と資本の貢献以外を全要素生産性=TFP(total factor productivity)という概念で捉える理論です。著者は「スエーデン型」と「米国型」を示し、日本と比較し、日本のみが国内における機械・設備等(=資本)の投資が小さく、低成長の大きな要因とします。著者は少子化による労働人口の減少は、労働生産性の向上に加え、資本とTFPの増強で十分カバー出来ると考え、その中でも特に、日本国内への「資本」の増加が成長力強化に有効であると説くのです。2018年のGDP成長率は、アメリカ2.86%、スエーデン2.34%に対し日本は0.81%(IMF統計)。約2%の格差の内、日本国内への資本投資の少なさによるGDP成長率の低下要因を1%と見積もった場合、毎年5.5兆円のGDPが失われている事になります。これが既に20年以上続いたことにより、110兆円(5.5×20)が失われたことになります。結論として著者が言いたいことは、スエーデンは負担が高いと思われているが、日本も低成長の結果として、高い負担と同等の「隠れた増税(得られるべき所得が得られない)」が行われ、これからも「隠れた増税」が続くと言う事です。『「選択と集中」環境+高福祉の「スエーデン型」』を選ぶか、『「選択と集中」環境+格差社会の「米国型」』を選ぶか、『「選択と集中」環境がなく「隠れた増税」』を続けるのか、日本は今、その選択を求められているのです。

 

【労働生産性が伸びず賃金も上がらない元凶は日本の労働慣行】

 「選択と集中」環境を損なっている元凶は、終身雇用制、解雇権濫用法理、「ジョブ型」ではない「メンバーシップ型」労働契約・採用、等にあるとします。詳細は紹介本に譲るとして、一朝一夕では変えることのできない難しい課題が存在することを認識しておきたいと思います。

【働き盛り世代の貧困を回避し、年金制度を維持するには、低成長からの脱却が必須】 

 いわゆる2060年問題、それは高齢者一人を現役世代一人が支える時代です。2015年にGDP比25%の社会保障費は、45年後には30%になると推計されています。もし毎年経済成長率が1%アップすれば、45年後にはGDPが45%増えます。又日本の労働生産性が米国の約半分ですが、これを米国並みにすれば、現役世代の人口が倍増したのと同じ効果があります。つまり、著者のメインテーマは、社会保障の持続可能性の維持、それを支える側の所得(一人当たりGDP)を大きくして行く事、その為に低成長から脱却し先進諸外国並みの経済成長力を達成する事なのです。

 

■ 日本経済低成長から脱却するための提案

 「低成長からの脱却」について、著者の考えを、ご紹介しましょう。

【「働くことの幸せ」を国も一緒に創り上げるー国が現状を変える先行投資をー】

 著者の主張のポイントは、日本国内市場が、日本企業は勿論、世界の企業から選ばれる市場にすることです。つまり、『思い切った「選択と集中」』が出来るよう、日本の雇用市場を柔軟なものに改革することです。単に柔軟にするだけでは、格差社会が広がる「米国型」になってしまいます。転職する人がキャリアアップして、所得が増える仕組みを作っていく「スエーデン型」を目指すべきとの主張です。その様な社会になれば、「働くことの幸せ」が広がり、労働生産性も大きく向上します。

 しかし、その様な社会は簡単にできません。「選択と集中」による転職する人の生活を十分に支え、キャリアアップし、生産性の高い企業に再就職させる仕組みを作るには、国の現状を変える先行投資が必要です。

 投資の財源を、将来世代の負担を避ける方法で行うには、増税が必要です。しかし、今の日本の民主主義の下では、この種の重要な事項についての議論が十分に行われないのが現実です。著者は、真剣な議論のきっかけになればとの思いで、本書を著作したのです。

 戦後営々と築き上げて来た、分厚い中間層が消滅しないために、豊かな未来を子供たちに残してやるために、政治家も国民も真剣に議論してほしいと著者は結びます。

 

【日々進化する企業経営を】

 紹介本では、成長率を高めるための企業経営について多くの知見を紹介しています。その中で目に留まった一つをご紹介しましょう。  著者が引用している斎藤ウイリアム浩幸氏(日系二世の起業家)の発言です。「日本には(グループはあるが)チームがない」「イノベーションが加速する世界で、個人、企業、国家が生き延びるためには、異質な価値観、異質な才能、異質な文化を持つ人がチームを組んで、共通の目標のために助け合うことが絶対条件」という発言です。人的資源が豊かな日本で、「米国型」の経営を取入れ、破壊的創造による新たなモノ・サービスを増やし、成長率を上げる必要性を説きます。

 

■ 「日本経済低成長から脱却するための提案」に真摯に取組もう(むすび)

 紹介本により、高齢化・人口減少時代に、日本の世界における下降トレンドに歯止めを掛けるヒントを得られたことです。それは、日本の現実に希望を持つ事でもあります。将来を見据え、希望を持って、低成長から脱却する経営を目指しませんか。それは、人口減少社会の課題克服という社会貢献に繋がります。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。

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  1. 2019/09/29(日) 17:08:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 日本経済低成長からの脱却 松元 崇 著  NTT出版

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 日本経済低成長からの脱却 松元 崇 著  NTT出版

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

『日本経済低成長からの脱却』(松元 崇 著  NTT出版)

 

 

■ 日本経済低成長から脱却することの意義(はじめに)

 著者は、内閣府の元次官で、アベノミクスの立ち上げに参画した経験を有します。その様な著者が政権の当事者ではなく、第三者として客観的に日本経済を俯瞰し、日本経済の課題の核心を突き、対応策を提言しています。著者が指摘する現在の日本経済の問題点を以下で見てみましょう。

 

【世界の中で縮み続けている日本】

 世界の経済構造が1990年代以降大きく変わりました。それは、IT技術の進歩と通信コストの激減と自由貿易体制(米中もEUも保護主義的な政策をとりながらも、自由貿易が大切との看板は下ろさない)により、モノの生産という点で、世界が一つの国になったことです。世界は、グローバルな競争の中で、得意分野に経営資源を集中し、不得意分野は切り捨てる、「選択と集中」の時代になったのです。しかし、日本国内では雇用慣行などにより「選択と集中」が難しく(特に撤退が難しい)、日本企業は、撤退の伴うリスクは海外で投資をする形になってしまい、国内経済成長の低下要因になっているのです。技術革新力、研究開発費はOECDの中で、ドイツ・アメリカと並んでトップクラスにも拘らず、企業が国内の投資に向けない結果、成長率低下の一因となっているのです。

 

【成長会計から分析する日本の経済成長率の低迷】

 日本が低成長になっている事を、成長会計という手法で分析しています。経済成長には①技術革新など②資本③労働力が必要とされます。労働と資本の貢献以外を全要素生産性=TFP(total factor productivity)という概念で捉える理論です。著者は「スエーデン型」と「米国型」を示し、日本と比較し、日本のみが国内における機械・設備等(=資本)の投資が小さく、低成長の大きな要因とします。著者は少子化による労働人口の減少は、労働生産性の向上に加え、資本とTFPの増強で十分カバー出来ると考え、その中でも特に、日本国内への「資本」の増加が成長力強化に有効であると説くのです。2018年のGDP成長率は、アメリカ2.86%、スエーデン2.34%に対し日本は0.81%(IMF統計)。約2%の格差の内、日本国内への資本投資の少なさによるGDP成長率の低下要因を1%と見積もった場合、毎年5.5兆円のGDPが失われている事になります。これが既に20年以上続いたことにより、110兆円(5.5×20)が失われたことになります。結論として著者が言いたいことは、スエーデンは負担が高いと思われているが、日本も低成長の結果として、高い負担と同等の「隠れた増税(得られるべき所得が得られない)」が行われ、これからも「隠れた増税」が続くと言う事です。『「選択と集中」環境+高福祉の「スエーデン型」』を選ぶか、『「選択と集中」環境+格差社会の「米国型」』を選ぶか、『「選択と集中」環境がなく「隠れた増税」』を続けるのか、日本は今、その選択を求められているのです。

 

【労働生産性が伸びず賃金も上がらない元凶は日本の労働慣行】

 「選択と集中」環境を損なっている元凶は、終身雇用制、解雇権濫用法理、「ジョブ型」ではない「メンバーシップ型」労働契約・採用、等にあるとします。詳細は紹介本に譲るとして、一朝一夕では変えることのできない難しい課題が存在することを認識しておきたいと思います。

【働き盛り世代の貧困を回避し、年金制度を維持するには、低成長からの脱却が必須】 

 いわゆる2060年問題、それは高齢者一人を現役世代一人が支える時代です。2015年にGDP比25%の社会保障費は、45年後には30%になると推計されています。もし毎年経済成長率が1%アップすれば、45年後にはGDPが45%増えます。又日本の労働生産性が米国の約半分ですが、これを米国並みにすれば、現役世代の人口が倍増したのと同じ効果があります。つまり、著者のメインテーマは、社会保障の持続可能性の維持、それを支える側の所得(一人当たりGDP)を大きくして行く事、その為に低成長から脱却し先進諸外国並みの経済成長力を達成する事なのです。

 

■ 日本経済低成長から脱却するための提案

 「低成長からの脱却」について、著者の考えを、ご紹介しましょう。

【「働くことの幸せ」を国も一緒に創り上げるー国が現状を変える先行投資をー】

 著者の主張のポイントは、日本国内市場が、日本企業は勿論、世界の企業から選ばれる市場にすることです。つまり、『思い切った「選択と集中」』が出来るよう、日本の雇用市場を柔軟なものに改革することです。単に柔軟にするだけでは、格差社会が広がる「米国型」になってしまいます。転職する人がキャリアアップして、所得が増える仕組みを作っていく「スエーデン型」を目指すべきとの主張です。その様な社会になれば、「働くことの幸せ」が広がり、労働生産性も大きく向上します。

 しかし、その様な社会は簡単にできません。「選択と集中」による転職する人の生活を十分に支え、キャリアアップし、生産性の高い企業に再就職させる仕組みを作るには、国の現状を変える先行投資が必要です。

 投資の財源を、将来世代の負担を避ける方法で行うには、増税が必要です。しかし、今の日本の民主主義の下では、この種の重要な事項についての議論が十分に行われないのが現実です。著者は、真剣な議論のきっかけになればとの思いで、本書を著作したのです。

 戦後営々と築き上げて来た、分厚い中間層が消滅しないために、豊かな未来を子供たちに残してやるために、政治家も国民も真剣に議論してほしいと著者は結びます。

 

【日々進化する企業経営を】

 紹介本では、成長率を高めるための企業経営について多くの知見を紹介しています。その中で目に留まった一つをご紹介しましょう。  著者が引用している斎藤ウイリアム浩幸氏(日系二世の起業家)の発言です。「日本には(グループはあるが)チームがない」「イノベーションが加速する世界で、個人、企業、国家が生き延びるためには、異質な価値観、異質な才能、異質な文化を持つ人がチームを組んで、共通の目標のために助け合うことが絶対条件」という発言です。人的資源が豊かな日本で、「米国型」の経営を取入れ、破壊的創造による新たなモノ・サービスを増やし、成長率を上げる必要性を説きます。

 

■ 「日本経済低成長から脱却するための提案」に真摯に取組もう(むすび)

 紹介本により、高齢化・人口減少時代に、日本の世界における下降トレンドに歯止めを掛けるヒントを得られたことです。それは、日本の現実に希望を持つ事でもあります。将来を見据え、希望を持って、低成長から脱却する経営を目指しませんか。それは、人口減少社会の課題克服という社会貢献に繋がります。

 

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

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  1. 2019/09/24(火) 12:05:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 実例に学ぶ 人と組織の関係性 「エンゲージメント経営」

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 実例に学ぶ 人と組織の関係性 「エンゲージメント経営

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 

実例に学ぶ 人と組織の関係性 「エンゲージメント経営

 

(コーン・フェリー 柴田 彰著 日本能率協会マネジメントセンター)

 

■   欧米のグローバル企業の叡智の集積「社員エンゲージメント」(はじめに)

 著者は、50ヵ国以上の国において、7,500人以上のスタッフを抱え、人材戦略を主とするコンサルティングファームであるコーン・フェリーのパートナーです。著者は、近年特に、「社員エンゲージメント」等のコンサルティング実績を豊富に積み、紹介本を著作しました。著者は「社員エンゲージメント」の定義を「自分が所属す組織と、自分の仕事に熱意を持って、自発的に貢献しようとする社員の意欲」とします。

 著者は、かかる背景から、実例に基づき、且、グローバルな視点から、日本企業の「社員エンゲージメント」の実態を分析し、グローバル化の進展などによる日本の社会・経済の変化、将来の社会・経済の担い手となる若者の価値観の変化を踏まえ、欧米に比べ異常なほどに「熱意を持てない社員の比率の高さ」に危機感を抱き、「社員エンゲージメント」を欧米並みに高めていく事が重要な企業戦略・人事戦略の一つであると強調します。

 更に、欧米は多民族文化・社会です。その様な社会でグローバルな競争に打ち勝っていくために「社員エンゲージメント」は必須の戦略でした。その意味で、永年に亘り「社員エンゲージメント」を高める叡智を蓄積して今に至っています。しかし、日本は、新卒一括採用と終身雇用という日本独特の慣行を今も有し、それが、“明確な序列”と“集団の排他性”を持った「村社会」を成立させ、「閉鎖的なコミュニティー」を築いてきました。過去の高度成長期はそれがプラスに働いた時もありましたが、最早その様な時代ではなくなり、グローバル化が進み価値観が多様化する中で、「社員エンゲージメント」を欧米並みに高めていく事が、今後の日本の経済・社会の発展にとって必要不可欠である事に、経営者は気づき経営に取り込んでいかねば、生き残りはないと言います。

 加えて、「社員エンゲージメント」は、“会社は社員が期待することを提供できているか” ‟社員が仕事に幸せを感じて意欲的に取り組めているか”の二つの問いを対で判断すべきもので、社員満足度のように一方的に判断するものとは大きく異なります。人と組織の関係性の変化に気づき、対応していく事が経営に求められると言います。

 著者は、コンサルティングの実例を踏まえ、日本の企業の経営者の意識はまだ大きく遅れていると見ます。著者が示す『「社員エンゲージメント」を経営にいかに取り入れていけばよいか』の考えを次項で見てみましょう。

                       

■   欧米に大きく後塵を拝している日本企業が、まず取り組むべきこと

【先ずは、経営陣が本気になること】

 著者は、「日本は社員エンゲージメント元年を迎えたばかりである」といいます。つまり、「社員エンゲージメント」の概念(要因・及ぼす影響など)が普遍的・自然なものとして定着するにはまだ時間がかかるのです。

 しかしそこまで待っていたのでは、様々な問題が発生してしまいます。既に、「社員エンゲージメント」の低さが原因で、グローバル企業での、海外におけるマネジメントの失敗、国内企業における離職率の増加等の問題が発生していると著者は指摘します。

 この様な事実を踏まえ、経営陣が危機意識を明確に持ち、「社員エンゲージメント」を経営指標の一つとして取り入れ、真摯に実行・スタートをすることが大切です。「社員エンゲージメント」は社員一人一人が対象となるわけですから簡単ではありません。

 定点観測を定期的に行い、それに基づく改善活動を地道に続けていく必要があります。数年の活動を続けることで、「エンゲージメント」が向上してきます。現場の社員のエンゲージメントの向上に直接関与していくのは、現場の組織長です。だからと言って、組織長に責任を投げてはなりません。あくまで経営陣が責任を持って、鍵となる、熱意と継続性を持って、「エンゲージメント」向上に向かって進むことが重要です。

【「社員エンゲージメント」を高めるポイント】

 著者は、著者の所属するコンサルタントファームの調査結果を踏まえ、「社員エンゲージメント」と相関の高いドライバー(要素)のBest8を挙げています。

①   顧客に提供する体験的価値への自信

②   成果創出に向けた効果的な組織体制 

③   自社におけるキャリヤ目標達成の見込み

④   生産性を高めるための環境整備

⑤   やりがい・興味がある仕事を行う機会

⑥   仕事を高めるための十分な人員の確保

⑦   一個人としての尊重

⑧   自社の戦略と目標に対する信頼感

 定点観測から得られた、Best8のドライバーは何を示唆しているのでしょう。私の感想では、経営陣には経営の示唆を与え、現場の組織長には組織長の対応姿勢に示唆を与えています。「社員エンゲージメント」は正に、経営を改革し、現場の組織長の資質を向上し、社員の仕事と所属組織に対する熱意を上げる、Win-Winの効果をもたらすのです。それは、日本で問題とされている、労働生産性(付加価値額)の向上を待たらすのです。

【「社員エンゲージメント」に関するその他の知見】

 紹介本には、著者及び著者の所属するコンサルタントファームの「社員エンゲージメント」に係るコンサルティング実例を基にした知見が掲載されています。欧米の後塵を拝している日本企業にとっては参考となる知見を発見できます。字数の関係で十分なご紹介が出来ませんでした。ご興味のある方は、是非紹介本を手に取ってお読み下さい。

 

■   生き残りをかけて「社員エンゲージメント」を経営に取り込もう(むすび)

 著者が指摘するように、「日本は社員エンゲージメント元年を迎えたばかりである」のです。未だ、十分な方法論などの知見が蓄積されている訳ではありません。

 「社員エンゲージメント」の向上の重要性は十分理解できます。それは、経営陣が「うちの社員は本当に幸せなのだろうか」と素直に考えることと同義です。

 出来ることから始めましょう。定点観測のためのSaaSを使っても良いでしょう。自社で開発した物でも良いでしょう。自社で仕組みを創出するのも良いでしょう。

 まず、出来ることから始め、継続的・地道に続けることが大切と思います。必ず、「やって良かった」と思える日が来ることでしょう。

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

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  1. 2019/08/27(火) 12:05:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 「日本人の勝算」大変革時代の生存戦略

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 「日本人の勝算」大変革時代の生存戦略

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

    (デービッド・アトキンソン著 東洋経済新報社)

   人口減少を直視せよー今という「最後のチャンス」を逃すなー(はじめに)

 この様な著者が、日本が直面する最大の課題である「人口減少・高齢化」の問題に関し、先入観を持って誤った判断をしがちな日本人の思考(著者は『日本人の「変わらない力」は異常』と表現)を排除し、外国人(著者)の目と、海外118人のエコノミストの「人口減少と経済」に関する論文から得られた分析と、加えて、世界中の統計の分析から、客観的・冷徹に「人口減少・高齢化」を直視し、対応戦略をプラス思考で『日本人の勝算』として著書にしたのが紹介本です。

 紹介本が示す、「人口減少・高齢化」を乗り越える対応戦略『日本人の勝算』を、次項で見てみましょう。

 それは、我々の先入観を覆し、その通りと頷首出来る、日本の進むべき方向を示しています。しかも、今から始めなければ遅くなる「最後のチャンス」でもあります。

  外国人だから分かる『大変革時代の「日本人の勝算」』

【資本主義を「High road capitalism」にアップデートせよ】

 著者は現在の日本の経営を「Low road capitalism」「低付加価値・低所得資本主義」と位置付けます。言い換えると「いいものを安く」「同類の商品の価格競争」「仕事の自主性が低い」「管理する側の層が厚い肩書主義」だと主張します。このままで行くなら、日本は三流先進国に成り下がると言い切ります。『「人口減少・高齢化」時代に、日本の現システムを維持するため、GDPを維持していくには「人口減少・高齢化」で下がるGDPを生産性向上でカバーしていく必要がある』と主張します。何故ならば「経済成長=人口×生産性」が成立つからです。更には「経済成長=人口×一人当たりGDP」と考えるならば、一人当たりの所得を上げていく必要があります。その為に「High road capitalism」「高付加価値・高所得資本主義」にパラダイム転換を図っていく必要があるのです。それは「よりいいもものをより高く」「専門性の高い分野での品質競争」「労働者と経営層との階層が少ない」「一般社員の給与が相対的に高くなる」経済社会への転換であると著者は主張します。日本の不勉強な経営者に任せず、政府の政策転換(最低賃金引上げ政策等)で行わないとパラダイム転換はできないとまで言い切るのです。

【輸出小国から脱却せよ】

 日本は輸出大国と言われていますが、実は、輸出小国なのです。著者はこう指摘します。『日本は、輸出総額では世界第4位ながら、一人当たり輸出額では44位、GDP比では117位。日本の輸出潜在能力が十分に発揮されていない。今までは人口増加により国内市場が拡大し、日本企業は国内市場を相手にしていればよかった。しかし人口減少社会で国内市場が縮小し、生産設備余剰・供給過剰の状態になる。その状態を乗り越えるには、輸出を増やす必要がある。世界のGDPに対する輸出比率の平均は41.07%、総額3位のドイツは46.1%。これに対し日本は16.1%。ドイツのある大学の研究結果によれば、輸出をしたいという意思が重要で、輸出の結果として生産性が高まる等の良い結果が出てくる。』

 著者は、日本が輸出潜在能力を発揮し、生産性の向上に結び付けられていないのは、中小企業を中心として、輸出したいという意欲・識見が欠如していることを問題にしているのです。

【企業規模を拡大せよ】

 著者が注目すべき試算をしています。日本の生産年齢人口(15歳~64歳)は、現在(2017年)の7,682万人が2060年には4,418万人に減ることが予想されています。この4,418万人を大企業から順に割り振ると、352万社中299万社(10人以上30人未満企業の43.5%と10人未満企業すべて)には一人も割り振れないのです。生産性の観点から言えば、先進国では小規模企業に勤務する労働者の比率の低さと生産性の高さの相関係数は0.93と極めて高いことが統計上明らかにされています。人材評価で世界4位(世界経済フォーラム「人的資本指数」2016年)に対し、生産性は28位となるのは、小企業で働いている日本人の比率が高いからと著者は指摘します。

 著者は、生産性の課題解決、輸出潜在能力発揮、「High road capitalism」へのパラダイムシフト等の点から、『企業規模の拡大』の重要性を主張します。

【最低賃金を引き上げよ】

 前述したように、GDP(=人口×生産性)を維持しようとするならば、人口減少社会では生産性を上げていく必要があります。著者は、生産性を上げるには意図的に誰かが上げる「人為的に伸ばす経済モデル」に転換していく必要性を強調します。

 マッキンゼーのレポートを引用し、問題になるのは中小企業の経営者の質の低さであると指摘します。中小企業の経営者の質を高める時間的余裕はもう有りません。著者は、そこで、強制的に経営者の質・生産性を高めるために、最低賃金の引上げを社会政策ではなく経済政策と考え、政府の所管を厚労省から、経産省に移し実施すべきと主張します。また、最低賃金の経済政策的引き上げは、併せて、経済成長、女性活躍、格差の是正、福祉問題、財政問題などに大きく貢献すると言います。

 著者のこの様な確信は、イギリスの最低賃金引上げ政策の実例があるからです。イギリスは1999年から2018年までの20年間に、12回、年率平均4.17%、金額では2.175倍最低賃金を引き上げました。失業への影響はなく、生産性の低かったサービス業の生産性が上がり、生産性の高い企業ほど雇用が拡大し生産性の低い企業の雇用は増えず、個々の企業の生産性の向上だけではなく、国全体の生産性を向上させた実績を残しています。

【その他の「日本人の勝算」】

 字数の関係で、上述に留めますが、他にも大切な「勝算」が書かれています。是非紹介本を手に取ってお読み下さい。

■   大変革時代の生存競争に生き残る「最後のチャンス」(むすび)

 紹介本から発信される「日本の勝算」を参考にしながら、かなり先と思えるものが、あっという間に到来する変化に対応すべく、今日から、前項で記しました仮説(生存企業数確率約15%)の生存企業に入る対策・改革を始めましょう。

 「最後のチャンス」の覚悟で取組むことで、良い結果を得る事が出来るのではないでしょうか。



【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック

 経営コンサルタントを目指す人の60%が見るというサイトです。経営コンサルタント歴40年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。

 著者は在日30年になるイギリス人で、その間、ゴールドマン・サックスやアクセンチュアを経て、現在は文化財補修の最大手「小西美術工藝社」の社長を務めています。2017年には日本政府観光局特別顧問に就任。

 

『「日本人の勝算」大変革時代(ターニングポイント)の生存戦略』

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  1. 2019/07/23(火) 12:05:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】事例から学ぶ「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】事例から学ぶ「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■      今日のおすすめ

 『「働き方改革」生産性とモチベーションが上がる事例20社』

(小室淑恵 著 毎日新聞出版)

■      「表面的・緊急的」改革ではなく「本質的・地道・着実な」改革を(はじめに)

 紹介本は「働き方改革」という題名で、「働き方改革コンサルタント」である著者が、自身のコンサルタント体験を記した本です。

 4月に働き方改革法の施行が始まったことから、「働き方改革」というテーマが社会的に盛り上がっており、紹介本もその一環と言えます。しかし、著者がこの紹介本を通しての主張は、『重要な経営課題は経営改革・意識改革であり、「働き方改革」のテーマが盛り上がる前も、熱が冷めた後も、常に企業経営に必須の課題』だと述べています。

 そのことを主張するために、著者は『「表面的・緊急的」改革ではなく「本質的・地道・着実な」改革を』と述べているのです。その様な意味で、紹介本は「働き方改革」についての実践論を通して、企業経営における経営改革・意識改革の必要性と、方法論を展開しているのです。つまり、「働き方改革」という狭い領域ではなく、幅広くそして新しい時代に何をすべきかと言う事を、紹介本の改革手法並びに具体的な企業の事例から読み取り、企業経営の大きなヒントにして欲しいと、著者は思っているのです。

 それでは次項で、具体的企業の事例の中から、企業経営にヒントになる事例を、ご紹介しましょう。

■      事例が示す「働き方改革」は「経営改革」

【企業文化、ブランド、業績、社員の幸せ感などに好結果の出た中小企業M・O社】

 M・O社は2015年に三重県が推進する「ワーク・ライフ・バランス推進サポート事業(コンサルタント派遣事業)」に手を挙げた従業員58名の調剤薬局です。大阪、名古屋から1時間の三重県松坂市に本社を置く、人材・採用面で大都市圏に優位を奪われる難しい処に立地しています。

 M・O社が「推進サポート事業」を契機に、コンサルタントのサポートを得ながら、従業員4名のトライアル店舗で「推進サポート事業」の趣旨に沿った改革を始めました。4名全員でゴールイメージを決める『カエル会議(カエルには、‟仕事のやり方を「変える」“‟早く「帰る」”‟人生を「変える」”の三つの意味。著者提案の会議。)』に参加し、会議室もホワイトボードもない処方室で、分包機を机代わりにA3用紙にメンバーの意見を書き込み、立ったままで自由な意見交換をし、「全員の有給休暇100%取得」をゴールにしました。

 このゴールを実現するため、マニュアルとスキルマップを作成します。ここで面白いのは、社歴の浅い新入社員にマニュアルを作らせたのです。それは、若手が、仕事を覚え、信頼して任されることから、やる気が芽生える効果を、目論んだのでした。スキルマップを作ることで、誰が休んでも問題ないために、各自どんなスキルを補充すべきかの見える化が図られ、「全員有給休暇100%」に向けて体制が着々と出来ていったのです。

 実際に「有給休暇100%取得」が実現できた結果、トライアル店舗ではどんな変化が起こったのでしょう。有休取得率は前年比352%、医薬品売上は前年比230%となりました。このトライアル店舗の改革を経営トップが認め、「社員がプライベートを大切にし、社員の幸せを第一に考えよう」とのメッセージを全社に発信したのです。

 この取組みが全社に広がり実施されました。その結果、結婚数は2倍、出産数は2.5倍、出産による退職者ゼロとなったのです。この結果は、地域社会にも知れ渡り、2017年の新卒採用では、エントリー数が前年の33名から、約5倍の168名に増加しました。

 小さく始めた地道な「働き方改革」を機に、企業体質・文化、社員の意識、地域社会の評価など全ての点で大きな変革を果たしたのです。

【『時間外削減・生産性UPが収入減に繋がる』熱意ダウン現象を解消したM・P社】

 M・P社は首都圏や全国中核都市の大型オフィスビルや商業施設の運営・管理や工事・修繕を行う従業員1072名の会社です。物件担当をユニットとした4つのトライアルチームで取り組みをスタートさせました。著者の提案する『朝メール・夜メール(「段取りで8割が決まる」の原理を達成させるためのツール)』『カエル会議(前出)』を実施し、トライアンドエラーを重ね、チーム間のばらつきも経験しながら、最終的には、チームメンバー間の「仕事の‟見える化”‟効率化” ‟共有化と助け合い”」を通じ、時間外削減の知見を得て、その知見を全社に広げ、目標年の2016年には、計画通りの業績を達成した上で、取組みスタート時比16%の時間外削減と残業時間代8,000万円の削減の結果を出すに至りました。

 私がこの事例を採り上げたのは、残業時間が削減され、生産性が向上しても、収入・所得が減ってしまうという「熱意ダウン現象」を解決した点にあります。表面的には経営者が判断・決定したことですが、その背景にある経営者の判断を促す仕組みに注目して下さい。

 それは、著者の提案に基づき、「トップと現場がざっくばらんに意見交換する場」を設けた事でした。ここで出て来た現場の意見は『時間外を削減し生産効率を上げても、収入・所得が減少する、「熱意ダウン現象」の指摘』でした。この意見を受け入れたトップは、捻出された残業代8,000万円全額を、賞与を通じ還元したのです。さらに、新たな表彰制度を設け、熱意を持って、一定の残業時間削減と有給休暇消化を果たした部署に、賞与時に、一人当たり6万円を支給することにしたのです。これにより、時間外削減・生産性向上に取組む熱意をサポートしたのです。

【ほかにも多くの好事例】

 字数の関係上、事例紹介は二つに止めますが、他にも企業経営にヒントになる事例が掲載されています。是非紹介本を手に取り、読み取って頂ければ幸いです。

■      「働き方改革」は「経営革新」のチャンス(むすび)

 「働き方改革」というテーマは、全社・全社員に共通した課題として、誰でも参加出来るコンテンツを持っています。「人口減少・高齢化・人出不足」に前向きに対応していく「チャンス」として活用できる好テーマです。

 このテーマは、「チーム」という組織に力点を置き、従来の経営改革からパラダイムシフトした改革手法として、メンバー相互間の知の結合を図り、シナジーアップし、さらには、他の経営課題にも繋げていく事で、大きな成果を出す事が出来ます。取り組んでみませんか。

【酒井 闊プロフィール】

 

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm

  http://sakai-gm.jp/

 

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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  1. 2019/06/25(火) 12:05:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?
 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
■  今日のおすすめ
 
『未来年表「人口減少危機論のウソ」』

     (高橋洋一著 扶桑社新書)

 
 

 

   著者が解き明かす「人口が減少しても何も問題はない」(はじめに)

 

 私達は、「2065年には日本の総人口が8800万人まで減少する。加えて2.5人に一人が高齢者となる。」と言う数字と、それと同時に発信される「人口減少危機論」を受け入れ、悲観的な危機意識を強く持っているのではないでしょうか。

 

 しかし、紹介本の著者は、「人口が減少しても何も問題はありません」「その理由を解き明かします」と宣言し、主に統計学的・数理的・論理的な根拠を示すことにより、本質的な真実を明らかにすると同時に、人口減少時代にこそ、私達が、正しい認識を持ち、「何を為すべきか」という前向きな姿勢で、様々な事態に対処するよう求めています。

 

 私達は、紹介本に巡り合えたことを「好機」と捉え、今まで持っていた「人口減少危機論」を白紙に戻し、著者の主張に耳を傾けると同時に、真剣に人口減少時代に向き合い、「何を為すべきか」問い直してみようではありませんか。

 

 卑近な話ですが、先日、千葉市立中央図書館に行って「人口減少」をキーワードに所蔵図書を検索してみたところ、6か月以内に出版された数冊の図書はすべて貸し出し中でした。紹介本もやはり貸し出し中でした。如何に「人口減少」課題への関心が高いかがわかります。唯一、図書館の書架に在庫としてあったのは、貸出禁止の「総務省平成30年版ICT白書『人口減少時代のICTによる持続的成長』」だけでした。

 

 この「白書」は、GDPの需要面から見た構成要素を「消費」「投資」「政府支出」「輸出入」と定義した上で、「人口減少時代」に国内市場が縮小していく中で、ICTによる需要・供給両面が増加する要因を二つ挙げています。一つ目は産業・業種を超えたICT「プラットフォーム」によって、データのやり取りが容易になり、BtoB、BtoC、CtoCの関係が変化し、新たな価値や仕組みが生み出され、「市場」が広がるとしています。二つ目はICT輸出・海外展開・インバウンド需要といったグローバル需要に対応した、態勢整備、グローバル需要の取込みへの創造的対応等により、「市場」が広がるとしています。「白書」の例は一例にすぎませんが、「人口減少危機論」に手をこまねいているのではなく、大きな構造変革・仕組み変革・新たな価値の創造への道を歩むことで、「人口減少時代」を前向きに乗り越える道があることを示しています。紹介本の主張する意義もそこに有ると思われるのです。

 

 それでは、著者が語る「人口が減少しても、問題の無い根拠」を、次項で、その一部をご紹介します。

 

「人口が減少による懸念事項」について「問題ない」と解き明かします

 

【人口がGDP成長率に影響を与える割合】

 

 著者は、「GDP=みんなの平均給与×総人口」と定義し、2065年に人口が8800万人まで減少した場合の、GDPの変化率を、微・積分的な計算式で、△0.7%程度との解答を出し、「この程度は、影響はほとんどなし」と結論付けます。つまり、この程度の減少は、前述の「白書」を例に上げ、ICTの活用等による生産性の向上等でカバーしてお釣りが出ると主張するのです。

 

【人口増減率と一人当たりGDP成長率は相関が無い】

 

 著者は、世界208か国の人口増減率と一人当たりGDP成長率(2000~2017年)をマトリックス(縦軸に一人当たりGDP成長率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、△0.22の相関係数になるとの結果を示しています。つまり世界全体でいえば、人口増加は不味(まず)いが、人口減少は不味(まず)くないとの結論を導くのです。同様の手法を先進国に限って行うと、一人当たりGDPは、人口増減率と無相関との解答・結論を導き出すのです。要は、人口減少はマクロ的に見ると、全く問題ないと結論付けるのです。

 

【インフレ率と人口増減率、通貨増減率の相関関係】

 

 インフレ率と人口増減率の関係については、世界銀行のデータを使い、世界173か国の人口増減率とインフレ率(2000~2008年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、0.1程度の相関係数で、ほぼ無相関との解答を示しています。一方、世界各国の通貨増減率とインフレ率(2000~2009年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に通貨増減率)上にプロットすると、0.7の相関係数になるとの解答を示しています(相関が強い)。つまり、「人口減少=デフレ論」は統計手法・高等数学に弱い官僚・学者の主張であり、デフレは金融政策で対処できることに、これらの官僚・学者は、目を向けるべきだと著者は主張します。

 

【人口減少で社会保障は破綻しない】

 

 著者は、この問題について「破綻しない」という数理的に説明できる根拠を持ちながら、敢えて紹介本に示さず(ページが足りない)簡単に説明しています。現役世代が高齢者一人を支える人数は、「高齢社会白書2018年版」によると(単位:人)、2000年3,9、2017年2,0、2025年1,9、2065年1,3とされていますが、著者は『年金を支えるのは人数ではなく「人口×所得」の金額こそが年金数理上大切なのだ』と主張し、『人口が減少しても「人口×所得」の金額が減少しなければ、何ら問題は生じない。その様な政策・経営をしていく事で破綻を回避できる。』と主張するのです。

 

   「人口減少」を「チャンス」と捉えよう(むすび)

 

 今こそ「人口減少」を梃子に、今まで旧態依然と流れていた日本経済には、大企業病による「エンゲージメント」の低さと、それに伴う生産性の低さ等、改める点は山ほど有るのではないでしょうか。

 

 例えば3・6K(きつい、危険、汚い、給料が安い、休暇が少ない、カッコ悪い)職場を、新3K(給料がいい、休暇がとれる、希望が持てる)職場にAI・ICT等を用い変えていく事で、女性が働ける職場すなわち労働人口を増やして行く対応・変革をしている企業が増えています。「特定技能1級」の外国人労働者を受け入れる安易な法改正により、労働集約型職場を温存させる政策は、ポピュリズム政策ではないでしょうか。むしろ、労働集約型職場は淘汰され、資本集約・知識集約型職場が主流となっていく時代ではないでしょうか。それは「人口減少」を「チャンス」と捉え改革した企業が生き残り、従来の流れを温存した企業が淘汰・買収される時代に成っていくのではないでしょうか。

 

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  1. 2019/05/28(火) 17:35:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】  『未来年表「人口減少危機論のウソ」』 深刻な問題?
 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
■  今日のおすすめ
 
『未来年表「人口減少危機論のウソ」』

     (高橋洋一著 扶桑社新書)

 
 

   著者が解き明かす「人口が減少しても何も問題はない」(はじめに)

 私達は、「2065年には日本の総人口が8800万人まで減少する。加えて2.5人に一人が高齢者となる。」と言う数字と、それと同時に発信される「人口減少危機論」を受け入れ、悲観的な危機意識を強く持っているのではないでしょうか。

 しかし、紹介本の著者は、「人口が減少しても何も問題はありません」「その理由を解き明かします」と宣言し、主に統計学的・数理的・論理的な根拠を示すことにより、本質的な真実を明らかにすると同時に、人口減少時代にこそ、私達が、正しい認識を持ち、「何を為すべきか」という前向きな姿勢で、様々な事態に対処するよう求めています。

 私達は、紹介本に巡り合えたことを「好機」と捉え、今まで持っていた「人口減少危機論」を白紙に戻し、著者の主張に耳を傾けると同時に、真剣に人口減少時代に向き合い、「何を為すべきか」問い直してみようではありませんか。

 卑近な話ですが、先日、千葉市立中央図書館に行って「人口減少」をキーワードに所蔵図書を検索してみたところ、6か月以内に出版された数冊の図書はすべて貸し出し中でした。紹介本もやはり貸し出し中でした。如何に「人口減少」課題への関心が高いかがわかります。唯一、図書館の書架に在庫としてあったのは、貸出禁止の「総務省平成30年版ICT白書『人口減少時代のICTによる持続的成長』」だけでした。

 

 この「白書」は、GDPの需要面から見た構成要素を「消費」「投資」「政府支出」「輸出入」と定義した上で、「人口減少時代」に国内市場が縮小していく中で、ICTによる需要・供給両面が増加する要因を二つ挙げています。一つ目は産業・業種を超えたICT「プラットフォーム」によって、データのやり取りが容易になり、BtoB、BtoC、CtoCの関係が変化し、新たな価値や仕組みが生み出され、「市場」が広がるとしています。二つ目はICT輸出・海外展開・インバウンド需要といったグローバル需要に対応した、態勢整備、グローバル需要の取込みへの創造的対応等により、「市場」が広がるとしています。「白書」の例は一例にすぎませんが、「人口減少危機論」に手をこまねいているのではなく、大きな構造変革・仕組み変革・新たな価値の創造への道を歩むことで、「人口減少時代」を前向きに乗り越える道があることを示しています。紹介本の主張する意義もそこに有ると思われるのです。

 

 それでは、著者が語る「人口が減少しても、問題の無い根拠」を、次項で、その一部をご紹介します。

 

「人口が減少による懸念事項」について「問題ない」と解き明かします

【人口がGDP成長率に影響を与える割合】

 著者は、「GDP=みんなの平均給与×総人口」と定義し、2065年に人口が8800万人まで減少した場合の、GDPの変化率を、微・積分的な計算式で、△0.7%程度との解答を出し、「この程度は、影響はほとんどなし」と結論付けます。つまり、この程度の減少は、前述の「白書」を例に上げ、ICTの活用等による生産性の向上等でカバーしてお釣りが出ると主張するのです。

【人口増減率と一人当たりGDP成長率は相関が無い】

 著者は、世界208か国の人口増減率と一人当たりGDP成長率(2000~2017年)をマトリックス(縦軸に一人当たりGDP成長率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、△0.22の相関係数になるとの結果を示しています。つまり世界全体でいえば、人口増加は不味(まず)いが、人口減少は不味(まず)くないとの結論を導くのです。同様の手法を先進国に限って行うと、一人当たりGDPは、人口増減率と無相関との解答・結論を導き出すのです。要は、人口減少はマクロ的に見ると、全く問題ないと結論付けるのです。

【インフレ率と人口増減率、通貨増減率の相関関係】

 インフレ率と人口増減率の関係については、世界銀行のデータを使い、世界173か国の人口増減率とインフレ率(2000~2008年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に人口増減率)上にプロットすると、0.1程度の相関係数で、ほぼ無相関との解答を示しています。一方、世界各国の通貨増減率とインフレ率(2000~2009年)をマトリックス(縦軸にインフレ率、横軸に通貨増減率)上にプロットすると、0.7の相関係数になるとの解答を示しています(相関が強い)。つまり、「人口減少=デフレ論」は統計手法・高等数学に弱い官僚・学者の主張であり、デフレは金融政策で対処できることに、これらの官僚・学者は、目を向けるべきだと著者は主張します。

【人口減少で社会保障は破綻しない】

 

 著者は、この問題について「破綻しない」という数理的に説明できる根拠を持ちながら、敢えて紹介本に示さず(ページが足りない)簡単に説明しています。現役世代が高齢者一人を支える人数は、「高齢社会白書2018年版」によると(単位:人)、2000年3,9、2017年2,0、2025年1,9、2065年1,3とされていますが、著者は『年金を支えるのは人数ではなく「人口×所得」の金額こそが年金数理上大切なのだ』と主張し、『人口が減少しても「人口×所得」の金額が減少しなければ、何ら問題は生じない。その様な政策・経営をしていく事で破綻を回避できる。』と主張するのです。

   「人口減少」を「チャンス」と捉えよう(むすび)

 今こそ「人口減少」を梃子に、今まで旧態依然と流れていた日本経済には、大企業病による「エンゲージメント」の低さと、それに伴う生産性の低さ等、改める点は山ほど有るのではないでしょうか。

 例えば3・6K(きつい、危険、汚い、給料が安い、休暇が少ない、カッコ悪い)職場を、新3K(給料がいい、休暇がとれる、希望が持てる)職場にAI・ICT等を用い変えていく事で、女性が働ける職場すなわち労働人口を増やして行く対応・変革をしている企業が増えています。「特定技能1級」の外国人労働者を受け入れる安易な法改正により、労働集約型職場を温存させる政策は、ポピュリズム政策ではないでしょうか。むしろ、労働集約型職場は淘汰され、資本集約・知識集約型職場が主流となっていく時代ではないでしょうか。それは「人口減少」を「チャンス」と捉え改革した企業が生き残り、従来の流れを温存した企業が淘汰・買収される時代に成っていくのではないでしょうか。

 

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  1. 2019/05/28(火) 12:05:00|
  2. 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 「終わった人」 定年を迎えたメインバンク出身の男性を描いた内館牧子著の話題作

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】 「終わった人」 定年を迎えたメインバンク出身の男性を描いた内館牧子著の話題作

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

■  今日のおすすめ

 『「終わった人」〔内館牧子著 講談社〕』

 内館牧子(うちだて まきこ、1948年9月10日 - )女史は、脚本家として、いろいろなドラマで活躍していますが、作家としての道も歩まれています。

 日本で最初の横綱審議委員会委員として活躍された時期もあり、東京都教育委員会委員を始め、公職としても活躍しています。

■【経営コンサルタントの本棚】 「終わった人」 内館牧子著 講談社 

 

◇ <その1>「終わった人」とは

「定年小説」というジャンルが、小説にあるそうです。これまでの代表作として城山三郎氏の「毎日が日曜日」を私は挙げることができます。

 2107年に発刊された内館牧子氏の「終わった人」という小説が、映画化されるなど、大変脚光を浴びています。

 私は、このタイトルを見たときに、「社会的に存在価値のなくなった人」という捉え方から、自分も、その仲間入りしつつあるのではないかと実感するようになってきました。

 そんな気持ちを確かめるために、この本を手に取ることにしました。しかし、日常業務にかまけて、なかなか紐解くことができなかったのです。

 ところが、読み始めたら、脚本家として培ってこられた、わかりやすく、読みやすい文章ということもありますが、ストーリーに引き込まれてしまいました。仕事の合間を見ての読書から脱して、連休を利用して一気呵成に読んでしまいました。

 それだけ、評価の高い作品といえます。 <その2へ続く>


◇ <その2> 主人公の生い立ちと出世街道

 大手銀行の出世コースをまっしぐらに走る主人公は、東大法学部出身者です。その様な人が銀行に入れば、当然のことながら、エリートコースに乗ることになります。早い出世は、約束されたようなもので、将来は、役員間違いなしでしょう。

 主人公は、予想通り、成功して行き、いよいよ役員選考時になり、当然のことながら本人も「今回は間違いなし」と確信しています。

 本人は、もとより、周囲も、学歴からも、その実力と実績からも高く評価されていました。

 上司に呼ばれ、役員昇進が決まったことを告げられれば「なんと言おう」と思案しながら、また、どの様な部署を担当する役員なのか期待しながら、上司の個室に向かいました。

 まもなく、自分にもこの様な個室が与えられることになると、ネガティブな言葉が待っているとはみじんも思わず、ドアをノックします。

 上司から、告げられたのは、社員30名ほどのシステム関係の子会社の専務取締役としての出向でした。

 左遷であることは明白ですが、周囲は「栄転」と言って送り出してくれました。パーティー会場から送り出されるとき、慣例として黒塗りの車での送り届けの車内の主人公の心中を適切に描いている内舘氏、経歴を見たら、本人もサラリーマン生活を送ったことがあるのです。


 出向先の子会社では、気持ちを切り替えて取り組まざるを得ません。経営改革努力は、実を結び、結果として出てきました。本社への配転も視野に入ってきました。

 しかし、会社の性格上、本社等からの受注産業的業務で成り立つ企業です。売上は安定していますが、大きな変革は期待できません。かといって、銀行という信用を重んじる企業ですので、無関係の会社からの受注は許されません。成長に限界があるのです。

 早く本社に戻りたいが為に、それでも体質改善の努力をしますが、なんと、出向から、その子会社への転籍という通知が来たのです。本社へ戻る道は絶たれたといっても良い状況になりました。


 大企業には、派閥争いという出世に大きく影響する潮流があります。主人公は、超一流の大学、しかも銀行での出世コースのための法学部を優秀な成績で卒業したのです。

 しかし、自分の配属部署にいることで、成り行きで所属することになった派閥が、主流から外れてしまい、トップで入社したにもかかわらず、同期の、しかもどちらかというと、それほどでもない男に、自分の進むべき道を盗られてしまったのです。

 その気持ちがいかばかりであるかは、われわれ凡人には解らないかも知れませんが、想像はつきます。出世競争というのは、厳しいものですけど、運・不運が伴うということは、なんとなく公平性に欠けているように思えます。 <その3へ続く>

 

◇ <その3> 定年退職者の心理

 前回、内館牧子女史の「終わった人」という書籍のイントロの部分として、主人公の学生時代からの生い立ちと、就職から出稿までの経緯についてお話しました。今回は、その後の主人公について、お話します。


 本社へ戻る道が絶たれた主人公は、定年延長という道を選ばず、会社が定めた62才で定年退職する道を選びました。送別パーティが終わり、型どおりの花束贈呈が済むと、一人寂しく家路につきます。

 翌朝からは、自分だけの時間を謳歌できるようになります。

 数日の謳歌が済むと、なんとなく居心地の悪さを感ずるのでしょう。これは、大半の定年退職者が感じることではないでしょうか。

 肩書きのない生活は、サラリーマン生活に浸りきってきた主人公には、馴染めずにいます。

 健康的な老後を過ごすためにスポーツジムに通うのですが、明るい、健康的なところを想定していたにもかかわらず、予想とは異なり、高齢者の吹きだまりのような思いを主人公はします。

「あの人達のようには、なるまい」と思う主人公の気持ちがわかるような気がします。でも、あの人達と同じように、主人公も、誰が見ても年寄りなのです。しかし、同じようになるまいともがきます。

 ひとり、年齢の若い男性がいて、年寄り達に囲まれて、ランチを一緒にしています。それを別に羨む気持ちはありませんが、主人公も誘われるものの、乗り気にはなりません。

 居場所のなさを感ずるのが、定年退職者の性でしょうか。 <その4へ続く>


◇ <その4> 第二の人生が始まる

 定年退職すると時間が自由に持てます。ところが、しばらくすると、それに疑問を持つようになります。主人公は、スポーツジムに通うのですが、予想と異なり、スポーツジムは高齢者のたまり場なのです。

 そのような中で、主人公は、大学院に行こうと決めたのですが、入学試験として論文があります。そのテーマをなににするのか迷いながらも、関心のあるテーマが、自分の専門外であることから、論文に仕上げられる基礎知識を習得するためにカルチャースクールの門をたたきます。

 受付の担当者と話をしているうちに、自分の故郷の有名人、石川啄木をテーマにすることに考えを変更しました。受付担当の女性が親切で、親しくするうちに、すんなりとそうなったわけではありませんが、食事に誘う仲となりました。

 しかし、東大出の秀才でも、不倫とはいえないが、女性との交際と大学院受験とは両立為ません。論文をまとめるということは簡単ではなく、やがて、それに集中するようになります。


 その様な折、スポーツジムに通っていたときの40歳代の男性と、道でばったりと会います。

 ジムに通っているときには、高級車を乗り回す、その男性にはあまり関心を持ちませんでした。ところが、彼が、ICT関連の会社の社長であることが判明、それだけではなく、主人公を顧問として迎入れたいというのです。

 その理由は、主人公の学歴、銀行定年退職(実際は、子会社)という経歴に関心が高いのです。ICT企業というのは、若い社員が多く、顧客からの信頼をなかなか勝ち取れませんし、金融機関からはなかなか資金貸し付けなどを得られません。主人公の経歴は、その様な企業にとっては魅力的なのです。

 サラリーマン生活の長い主人公には、その”性(さが)”が、頭を持ち上げ、顧問を引き受けることになりました。

 幸い、主人公の経歴がモノをいい、業績も向上し、主人公も、その会社では不可欠な存在と、社長だけではなく、社員も思うようになりました。以前いた会社と同じような規模であり、そこでの経験を活かすことができたのです。

 大学院受験は棚上げ、一方、気分的にゆとりが出てくると、カルチャースクールで出遭った女性と再び食事をするようになりますが、それ以上の進展はありません。 <その5へ続く>


◇ <その5> 若い社長の突然死

 銀行で出世競争に敗れた主人公が、その子会社で定年を迎え、悠悠自適の生活を始めましたが、それに満足できません。通っていたスポーツジムの会員である、40歳代の男性の誘いで、ICT企業の顧問を務めるようになりました。

 主人公は、定年退職でくすぶっているような人ではなく、”働くこと”に生きがいを感じる人ですので、ICT企業における新しい日々を謳歌できるようになりました。

 しかし、よいことは、いつまでも続くとは限りません。若い社長が突然他界し、明るい空気が一変してしまいます。

 主人公は、後任の社長候補を心に決め、取締役会に臨みます。その場で、その案を提示しますが、意に反して、四人の取締役は、主人公を社長に迎入れたいと、固い決意を示します。

 主人公は、一旦は断りますが、結局、引き受けることになりました。

 経営者が代わると、金融機関や取引先が心配するので、挨拶回りをします。幸いなことに、主人公の経歴がモノをいい、大半が従来のマーケティング間継続できることになりました。

 新たに打つ手が当たり、好調に推移します。

 国内事業だけではなく、海外展開も視野に入り、幸いなことに東南アジアの某国の顧客との商談がまとまりました。相手企業は、国の高官が関与する企業で、その契約を進めることにしました。

 3億5000万円の商談ですので、会社は一気に活気を呈するようになりました。

 かつて通っていたカルチャースクールで知り合った女性との会食も再開できました。

 妻は、かねてから計画していた、自分の美容室を持つための準備を着々と進めています。 <その6へ続く>

 

◇ <その6> 恋人の裏切り

 よいことはいつまでも続くわけではないということを知る主人公に、新たな試練が襲ってきます。

 政府高官をしている、海外取引先の企業のオーナーが失脚してしまいます。そのため、いろいろと手を尽くしたものの、3億5000万円は、回収不能となってしまいました。

 金策に走る毎日。元勤務していた銀行も冷たいもので、ましてや他行も掌を返すがごとく、融資をしてくれません。

 当然のごとき成り行きで、倒産。社長として9000万円の負債を負担することになりました。

 そのタイミングで、自分の美容室の開店が行われました。

 妻は、態度を一変。夫婦仲は険悪となり、主人公は主夫となってなんとか結婚生活は続きます。しかし、まともなコミュニケーションもない日々です。

 カルチャースクールの女性と会食の機会を作り、抜き差しならない関係になるように画策します。ところが、ことの成り行きで、実現できませんでした。

 その背景には、主人公が腰を抜かすようなことが進んでいたのです。

 主人公の従弟の家で会食することになり、難とその席に偶然、主人公がいるのを知らずに、その女性が訪れてきたのです。その女性と従弟とことの関係を知った主人公の気持ちはいかばかりでありましょう。 <その7へ続く>

 

◇ <その7>「 終わった人」の人生の行く末


 悶々とする主人公のところに、故郷の高校で同窓会が開催されることになり、岩手に帰郷しました。級友と再会、自営業や、中にはNPO法人を立ち上げて、地方創生を行っているものもいます。

 母親にも会え、主人公は、何か新しい生き方もあるのではないかと気がつきます。

 主人公は、岩手に帰りたいという気持ちが強くなるのですが妻に対する贖罪ができなくなるということと、内心で葛藤をするのです。

 妻に話すと、意外とあっけらかんとして、岩手に帰ることに同意します。しかし、離婚はしないという条件が付きました。

 その言葉の裏には、主人公の贖罪において、ジワジワと攻める、真綿で首を絞めるような意図も感じられます。

 結局、主人公は新幹線に乗って、岩手への帰途につきます。妻から、一つ後の新幹線で追いかけるから、岩手駅で待つようにと連絡があります。

 二人で、主人公の母に会います。妻は、母親に心配かけまいと演技をしてくれます。主人公は、和らいできた妻の気持ちに安堵するところで、終わります。


 作者がいう「終わった人」と、読書前の私の「終わった人」という意味に、ニュアンスの違いを感じますが、それを上手に表現できません。

 私は、もっと狭く、たとえば主人公の銀行の中で、終わった人として周囲の冷たい目にさらされるというようなストーリー展開を想像していたのです。

 ところが、社会的に、価値のなくなった人ではありますが、まだ、社会は、主人公の価値を必要としているというのが、作者のいう「終わった人」です。

 ここに作者の大きさを感じました。

「終わった人」というのは、周囲の見方と、本人とでは、捉え方が異なることに気がつきました。自分自身が「終わった人」と気がついたときに、別のステージでの生き方を模索できる人と、それができない人が世の中に入るのではないでしょうか。

 後者の人こそ、本当に「終わった人」であって、この本の主人公のように、故郷で、新たな生き方ができるのではないかと、希望を捨てない人は、終わっているのではなく、新たな人生のスタート台に立てるひとなのです。

 私も、後者の、本当に終わった人ではなく、本書に描かれている、主人公のような道を見出したいと思います。

(ドアノブ)

  ブログで連載しました

  <その1>「終わった人」とは

  <その2> 主人公の生い立ちと出世街道

  <その3> 定年退職者の心理

  <その4> 第二の人生が始まる

  <その5> 若い社長の突然死

  <その6> 恋人の裏切り

  <その7>「終わった人」の行く末

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■■ 【経営知識】管理会計 管理会計を再び紐解いてみてはいかがですか?

 

 管理会計を学んだことのある人は多いと思います。

 ところが、理屈ばかりで、今ひとつ面白みがない「学問」であると感じた人も多いでしょう。

 ビジネスパーソンは、管理会計を学問と捉えるよりも「経営実務のための経営思想」と捉えてみてはいかがでしょうか?

 ますます、わからなくなった!?

 と、お感じの方は、ぜひ、当ブログを参考にしてみて下さい。

 

■ “真”の管理会計とは何かを初心に戻って見直してみましょう

 管理会計は、私たちに「気付きの機会」を与えてくれる魔法の力を持っています。たとえば、需要予測をして、売上計画を立案したり、営業部門の課題抽出に使ったりなど、管理会計は現場の実務にとても役立ちます。

 一方で、「管理会計は理屈っぽい」「実務とかけ離れている」などと敬遠されがちです。その背景には、管理会計関連書の多くがアカデミックな著者による執筆だからです。経営というのは、泥臭い部分が多いので、現場で苦労している経営者・管理職や担当者の求めているものとは異なるところが多いのです。

 筆者は、40余年もの長きにわたって経営コンサルタントとして現場に密着してきました。従来の管理会計がバランススコアカードとか損益分岐点分析とかという経営手法の横割り的な目次構成でしたが、本書は、そのメリットを活かし、かつ利用者が求めている縦割り的な利用法をマトリックスに組み合わせたコンセプトで書かれています。

 また、経営コンサルタント団体として最も歴史と伝統のある「日本経営士協会」による、日本を代表する会計学の権威者が培ってきたノウハウを継承して、昨今の経営現場に即する形に管理会計を焼き直しました。その結果、従来の管理会計とは「別物」といえるほど、現場に則した管理会計書になりました。

 本書は、「営業・マーケティング編」として記述されていますが、営業職だけではなく、ICTや経営企画などの現場でも役立つ管理会計のノウハウと、自分の仕事に生かす方法を解説した「きょうか書(教科書+強化書)」です。管理会計で「なにができるのか」「どのように取り組むべきなのか」を興味のある項目から調べましょう!

目次

 第1章 管理会計を正しく理解する

 第2章 需要予測で売上計画を立案

 第3章 社内データを活用した顧客戦略に管理会計を活かす

 第4章 商品戦略、地域戦略に管理会計を活かす

 第5章 市場戦略に管理会計を活かす

 第6章 温かい管理に管理会計を活かす

 第7章 温かいプロセス管理ができる営業設備

 第8章 管理会計で営業力を向上させる

 定価:1,800円(+税) A5判/ページ数 359ページ

 

■ 著者プロフィール

 アメリカで経営学、マーケティングを学び、日本の商社で事務機器、印刷機器の輸出入業務や新製品開発と市場導入などを担当。ニューヨーク駐在所長、アメリカ法人役員などを歴任後、経営コンサルタントとして独立。パソコン揺籃期から中堅・中小企業のパソコン活用の啓蒙、ICT活用による経営戦略の指導など、国内のみならずグローバルなコンサルティング活動を展開。現在、日本のコンサルタントの地位向上、若手育成に力を注ぎ、日本経営士協会会長他、各種の要職に携わってきました。

 ソフトバンク「営業管理職のためのパソコンノウハウ」、秀和システム「ロジカル・シンキングがよ~くわかる本」「クリティカル・シンキングがよ~くわかる本(秀和システム 今井信行著)」、アメリカ・マグローヒル社「アメリカにとって今が対日進出のチャンス」など、著書や論文・寄稿・講演など多数

 

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